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カスタマーレビュー 
密室の閉塞感
(2008-05-01)
登場人物はたったの3人。人生勝組のスポーツ記者で傲慢な夫アンジェ。なぜか弱い者には優しい美人妻クリスチーネ。ヒッチハイクであやうくアンジェの車にひかれそうになる名もなき貧乏学生。その青年が、アンジェの気まぐれから湖上のヨットで優雅な週末を過ごすことになるのだが・・・。
(はじめ聞いた時、ハービー・ハンコックの『メイデン・ボヤージュ』かなと思ったのだが)ポーランドのジャズピアニスト・クシュシュトフ・コメダが担当したという音楽が実にすばらしい。ほとんどのシーンがヨットのデッキかキャビンの中というある種密室的な空間で、『死刑台のエレベーター』のような緊張感を生み出すことに成功している。かといって、この映画はヨットの上でこきつかわれた青年が頭にきて夫をナイフで刺し殺してしまうようなサスペンスではなく、むしろ倦怠を迎えた夫婦の精神的亀裂が青年の存在によって浮き彫りにされるという心理ドラマなのだ。
青年が肌身はなさずに大切にしている<ナイフ>は、人生を自らの力で切り開いていこうとする無垢なるパイオイア精神のメタファーであり、すでに成功をおさめているアンジェにとっては無用の長物。かつての自分が持っていたことすら忘れている。そんな傲慢なアンジェを俗物よばわりし、青年と体を重ねたクリスチーネは、アンジェとの間に愛を取り戻すことができたのだろうか?2人を乗せた車は道の分岐点でエンジンをつけたまま動こうとしない。
オヤジと若者はいつの世も反目しあうもの
(2003-08-30)
『水の中のナイフ』の邦題は素晴らしい。
全編ナイフの切っ先でチクチクされるような緊張感に満ちたやり取りが続くのだ。
「結婚」関係の成立というイヴェントの興奮から醒めて、退屈と飽きの階段を昇り始めた夫婦。
半ば慣習のようにして、今日はヨットクルーズに出掛ける。
そこへ現れたヒッチハイクの青年。
若者特有の生意気さが鼻に付く。
何がどう転んだか青年もクルージングに加わることとなり、やがて起こるは独りでに動き出すヨット、青年が取り出すナイフ、溺れる青年、岸へ向かって泳ぎ出す夫、そして・・・・・・・・。
セリフは少ないながらも、緊張が一気に弾ける様を視線と、物と人両方の動きで見事に描き出す。
夫、妻、青年、三者三様の思惑がねっとりと絡まりあい、やがて!る一線を越えてゆく。
自らのプライドを守るため頑迷に決意を貫こうとする夫に対し妻は・・・・・・・。
結婚に対する希望も幻想に過ぎなければ、その幻滅から逃れるべくして現れた青年との関係も所詮は幻想に過ぎない、というラストが見事。
「刺激的な日常」なんてものは存在し得ないのだ。
スウェディッシュ・テナー奏者ベルント・ローゼングレンを迎えた、ポーランドの天才クシシュトフ・コメダのクァルテットによるジャズサントラがとにかくカッコいい!
1冊の写真集が創れるほどです。
(2003-04-13)
今、話題のポランスキーですが、この映画の素晴らしさが
あまり知られていないのが残念です。。。
登場人物を3人だけに絞り、貧富や世代の差から生じる
葛藤や心理を洞察深く描いたこの作品は、
一度見たら忘れられない程のインパクトがあり、
私はポランスキーの中で一番好きな映画です。
特に素晴らしいのが、モノトーンの美しい映像美で、
どのカットを切り取ってもスチール写真としても完成されており、
この映画のカットだけで、1冊の写真集が創れるほどの美しさです。
第一回監督作品ランキングがあれば、堂々一位のはず!
(2002-07-07)
第一回監督作品としてこのような質の高い映画を作れるその才能に驚くばかりです。もし第一回監督作品のランキングがあれば、堂々一位になるはずです。
黒澤明の 「姿三四郎」 、スピルバーグの 「激突」 、・・・・才能溢れる監督の第一回作品は数あるが、これほど深い心理を描いた作品を私は知りません。
ポランスキーの心理描写に、すっぽりはまってみませんか?
第一回監督作品の枠を取り払ったとしても傑作と言いきって良い作品です。
映画の奥深さを知りたいのなら是非見ていただきたい作品です。


